いろいろ発見メモ

さまざまな試行と実験と発見と調べ物のメモ書きです

作曲家としてのマルティン・ルター

Martin Luther

「作曲家としてのマルティン・ルター」とは

宗教家としてのマルティン・ルターは有名ですが、彼が作曲家だったことは学校の世界史の教科書にはあまり書かれていないのではないでしょうか。今日それを初めて知りました。

宗教家マルティン・ルター

宗教家マルチン・ルターは15世紀末(1483年)ドイツで生まれました。ご本人は敬虔なカトリック教徒だったのですが、教会に対する素朴な疑問を追いかけていたら結果的にプロテスタントを生み出す宗教改革のきっかけとなった人物です。

その著作によって、当時の皇帝から異端とされ、フリードリヒ3世の保護を求め、ヴァルトブルク城にかくまわれました。ルターはそこで、ギリシャ語の新約聖書をドイツ語へと翻訳します。それまで聖書は聖職者だけが読めるものでしたが、ルターはそれを普通の民衆でも読めるようにしたのです。

ja.wikipedia.org

作曲家マルティン・ルター

さて、聖書を翻訳したルターの運動に諸侯の動きが合わさって、ルター派教会が生まれることになるのですが、そこで必要になったのは「賛美歌」です。当時の賛美歌はラテン語の歌詞を使う複雑なポリフォニー合唱でした。要するに専任の合唱隊が歌うもので普通の人たちは歌えなかったのです。

聖書をドイツ語に翻訳したルターは、賛美歌も人びとがドイツ語で歌うことのできるシンプルな楽曲であるべきと考え、自らリュートを演奏しながらドイツ語の賛美歌を作曲したようです(合唱としての編曲は同志が行いました)。

たとえば「深き困窮より、われ汝に呼ばわる」などを始めとするいくつかの楽曲が残されています。この形式は「コラール」という名前で呼ばれるようになりました。

 

「深き困窮より、われ汝に呼ばわる」(マルティン・ルター作曲)

www.youtube.com

 

この曲はのちに J.S. バッハの BWV38 の中にも採用されました。現代の賛美歌ではこの和声が使われることが多いようです。

www.youtube.com

 

自分たちの言葉で歌える賛美歌というのは、その当時の人びとに大きな影響を与えたことでしょう。その意味で宗教者、聖書翻訳者としてのルターはもちろん大きな存在ですが、作曲家としてのルターの影響も決して小さくはなかったのでしょう。